わたしはずっと君を愛していた、つもりだった。だけど時計はいつまでも動き続けるし、爪の隙間から血はこぼれ過ぎるし、目からは涙がとまらない。ぎゅうと首を締め上げられて、わたしの足は爪先だけが地面に触れている。酸素も窒素も二酸化炭素も何もかも、ぜんぶ身体から消え去っていった。意識が途切れ途切れに真白くなって透明になって昇華していく。やめてやめてやめてやめてやめてやめてやめてやめてやめてやめてやめてやめてやめて。死ぬのは怖くないし苦しくも辛くも嫌でもない。だ、けど、目の前にいる筈の君はもう見えはしないし、元より君はわたしを見ていない。恋だの愛だのそんな陳腐なことを信じたんじゃなかった。ねえ、わたしはただ君のこと純粋に愛したかっただけなんだよ。実体なんて何でもよかった。本当に、何でもよかったのに。

「…もう、限界」

六道骸、わたしは君のことをずっとずっと憎んでいた。愛していた、つもりだった。それでも君はわたしの首をその愛でた指で締め上げるようになった。もう、いいんだ。やめてやめてやめて。叫んだってもう届かないんでしょう。わたしはただ君が愛されることを拒むように、君に見て欲しかっただけなのに。さよなら。やめてもらうことすら叶わないのなら既に訪れていた限界を受け入れるだけ。さよならさよならさよならさよならさよなら。もう二度と会わない愛しかった君。だらんと垂れたわたしの血の通わない白い腕と指はいつしか地を指差すことしか知らなくなった。


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