会いたい会いたい会いたい、優し過ぎる貴方に会いたい。貴方の優しさは痛いけれど、決して辛くはない。会いたい、会いた、い。

「っ鴇」

ぐずりと鼻をすすったわたしの顔には雨とも違うしずくがついとつたった。会いたい。貴方はわたしと会えない場所にいて、そこは雨は通り抜けるのにわたしは通り抜けられない、そんな場所。ざあざあと降り続く雨はきっとわたしを濡らして、また別のところで貴方を濡らしているんだろうなあって考えたら、少し気分が楽だ。遠く、本当に遠くから来たと言っていた。それなら、こんなに近くにいるのは奇跡に近いはずだ。なのに、これ、本当に近いの?絶対的な壁に隔てられて、近いって言えるの?会いたい会いたい。雨が、痛い。

「……と、きっ」

どうしてなんだよ、って叫ぶ雨に髪を濡らした貴方が見えた。立派な立派な着物をかけてくれた。どんどんわたしの血が染みていっている。最期に、最期に貴方に会えてよかった。相容れないわたしにこうして着物をかけてくれる、そんな貴方が好きでした。

(どうして結界内に入ったりしたんだよ、妖のお前は、弱い弱いお前は死んでしまうのに、なのに。)



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