あなたがいなくなってもう一ヶ月経ちます。悲しみに暮れていたこちらの世界ももうあなたを忘れてしまったかのように今ではせわしなく回っています。既にあなたの場所だったところにはあなたの部下が就きました、あなたがいなくなって出来たあまりに大きい穴を埋めようと奮闘しています。どうして一人で向かったのですかなんてありふれた質問をすることは飽きてしまいました。あなたがいなくなった場所からは冷たい腕が一本届いたようで、今では大きな墓まで作られたようです。わたしは、一度も、行っていません。死んでなんかいないんでしょう?だってあの腕はあなたの腕なんかじゃなかったもの。あんなにわたしを愛でた指は、あんな指じゃなかったもの。墓なんてそんな陳腐なものを拝むなんていやなのです。あなたがもし死んでいるのなら腕だけじゃなくて体ごと返して下さい。あなたの、その白髪と翡翠の瞳を見るまではわたしは絶対に認めません。あなたがもし生きているのなら、時間は問いません、ただ、帰って来てわたしにその白髪と翡翠の瞳を見せてくれさえすれば構わないのです。あなたが任務に立つ前日のキスが最後のキスになるのですか。動き始めた時の中でわたしは一人そこに止まり続けています。寂しくなんかありません。悲しみに暮れることをやめたあなたの部下に手を差し延べられようと決してそれを取ることはありません。涙も流さず、墓も拝まず、前にも後ろにも進まずにわたしはここにいます。あなたがいなくなってもう一ヶ月経ちます。わたしが怖いのはあなたが死んでしまっていることではなく、あなたがいない現在に慣れてしまうことなのです。


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