担当教師に促されるままその女の頭を叩く。クラスからはどっと笑いが生まれ、教師までもが笑っていた。不愉快そうに顔を歪めて女は顔を上げる。あー、ぶっさいく。

「…阿部?」
「起きろバカ」

みんな見てんぞ、とそっと言ってやれば女はそうだねー…とだけ返し、やっと背筋を伸ばす。ここまで来れば生徒の興味も薄くなって教師が前を向く。ったく、なんでオレはこいつの前の席なんだ。ため息を吐いて前を向こうとしたところに声がかかる。「ねえ阿部」。なんだよと再び向き直るとカランとペンを机に落とす音が響いて、眠そうな目とオレの目が合った。「これあげる」。渡されたのはオレのあまり好きではない無駄に甘い飴ひとつと、この授業で配られたプリントを適当に四つ折りにしたもの。とりあえず受け取って前を向く。飴を受け取ったのが教師にばれると厄介だ。四つ折りにされたそれをとりあえず一度開いて二つ折りにする。そこにあったのは右上がりな「ありがとう」で、そんなことにプリント使うなよもったいねェ、と思いつつもう一度開くと、あったのは少し長めの文章。そこでオレが再び後ろを向くことはなくて、少し思考が渦巻いただけだった。えっと、ひとまず授業が終わったらお前はどんな夢見たんだって聞くしかないみたいだ。

(さっきも言ったけどあたし阿部のこと好きみたい)


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