「阿部先生の数学受けたい」
「はあ?」

お前文系だろーが。オレは理系の数学担当だから無理なんだけど。きゅいきゅいと音を立ててホワイトボードの文字を消していく先生の後ろ姿を見る。なんで白衣の背中に汚れがついてるんだろう。もたれかかったのかな。

「だけど先生じゃなきゃやだ」

先生の数学じゃないとやる気でない。先生じゃないとわかんない。ねえ、受けちゃだめ?

「なにがだめ?だ」

お前は文系で、オレは理系担当なの。無理なもんは無理。そう冷たく切り捨てて綺麗にしたホワイトボードを眺めてペンを缶に立てた。ばかばかばか、阿部先生のばか。せっかく可愛い生徒こんなに先生に懐いてるのにそれをそんな足蹴にするなんてひどい!

「落書きしちゃる」

先生のペンを盗んで、ふたを外して。白衣をぐいと引っ張って赤い文字を浮かべる。

「ちょ、てめっ」

慌てて白衣を脱いで背中側の文字を見た瞬間にぶっと吹き出した。それからあーもうと小さくこぼしてそばにあった手帳を開いた。

「金曜の7時」

空けといてやっから。白衣をたたんで振り返って、わたしからペンを取り上げる。ほ、ほんとに?ああ、でも1日でもサボったら全部なしな。と言いながらペンをもう一度缶に立てて咳払いをひとつ。ありがとう先生大好き!そう叫んだわたしの声は聞こえなかったとでも言うように白衣に目を落とし、もうこれ着れねーじゃねえかと小さく呟いた。ごめんね先生、それがわたしの本音。


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