結局あの日から連絡を取らないまま1週間経った。浪人生になって予備校に通う、その準備もこの1週間でほぼ整った。彼も大学の準備に忙しいんだろうな、うん。きっと忙しくしてる、いやしていて欲しい。そうしてわたしのことを少しでも忘れていて。でもそんな甘い考えは通用しないようで、来るようになった彼からのメール。朝には「おはよう」、雨が降れば「傘持ってるか?風邪ひかんようにな」と心配までしてくれて、夜には「おやすみ、ちゃんと布団着て寝るんやで。あとあんまり夜更かしたらあかんで」と。1日に多くて3件だったけれど、全部読んだ、でも全部、返事はしなかった。しつこいのは嫌いや、と言った彼は野暮ったいことはしない。だからこんなメールをたくさん送ってくれる彼は、これを本当にしつこいと思っているかどうかは別としても、相当悩んでこれらのメールを打ち、送信してくれているんだろうなと、そう思うだけで胸が痛む。わたしのわがままに付き合わされて、こんな。メールが来る度にぐわんと押し寄せる感情の波。毎度毎度ぎゅうぎゅうとお腹の奥に押し込んで知らない顔をする。それが3日続いて、そろそろお腹がいっぱいになってきた。もう、飲み込みたくても飲み込めない。本当にいやならば受信拒否でも何でもしてしまえばいいのだ。でもそれをしないのはわたしの甘え。彼を拒否出来るわけなんて、なかった。ああ、苦しい。





4日目、決壊。溢れる。

泣いているのかも泣いていないのかもわからなかった。いつもある場所に鏡がない。そもそもいつもある場所ってどこだ。わたしは、何をしている?動揺が先行する。でもわたしの指は頭が動くよりも先になめらかに滑って、「おはようさん、ちゃんと起きてるか?」のメールを開いて返信ボタンを押し、確実に彼にメールを送った。

『ひらこ あいたい』

送信してから見つけた鏡。目を真っ赤にしたわたしが映るそれを、どうしようもなく破壊したくなる。



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