きっと君は泣く。いい具合に染まった空の下で、そしてオレのうしろで。遠慮がちに脇腹に添えられた小さな手がかろうじて見える。いま、どんな顔をしているんだろうか。うしろにひとり居る分重たくなったペダルを力を込めて踏む。がしゃん。差しかかった上り坂で左右に少し振られると、その小さな手はこれまた遠慮がちにその力を強める。かわいくて、仕方なかった。自分の表情がやわらかいのが手に取るようにわかる。うしろに乗るまえの表情をふと思い出す。赤くなって、困った顔で、口をぱくぱくさせていた。それから目。目は、うるんだように見えた。もうすぐきっと君は泣く。自意識過剰と言われようとオレにはわかる。坂の一番上にたどり着いて、町を一望。数秒後に少し冷たい風の中でオレは、君に言わなければいけないことがある。君は、なんて言うだろう。どんな顔を、するだろう。ああ、はやく言いたい、はやく、君の顔を見たい。下りに入った坂道をブレーキをかけながらゆっくり進む。カウントダウン。さん、右足を踏み込む。に、左足。いち、右手を小さな左手に重ねる。

「好きだよ」

背中で息を飲むのが聞こえた。少し、とまってもいいですか。顔、見せて。

20101211


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