東京帝国大学を出て時に女に溺れて自殺、これが有名作家のエリートコース。太宰治は有名な玉川上水での入水自殺、あの川端康成も最後はガス管くわえてボンッ、で、三島由紀夫もかの有名な割腹自殺でしょう?なんか、すごいと言うか、すごいと言うか。才あるひとと、気のフレたひと、これって紙一重なんだなあって。でもやっぱりこういうひとの文章って危機迫るものがあるし、勢いがすごい。現代の作家がだめとか言うんじゃないの、村上春樹とか好き。あ、そういや村上春樹も東大だったっけなあ、まさか、将来的に自殺とか…ない、と、思いたい。えっと、長くなったけど、要するに、ですね。

「要するに?」
「エイジくんは、作家じゃないし東大出でもないけどそれに近いものがあるから、その、死なないで、ね」

ただ怖くなっただけだった。夜のNHK、有名作家の特集が組まれていて、それを見たというだけのはなし。作家作家と番組で言われているのを聞きながらも、その才や勢いに思い当たるのはマンションのお隣さんの彼のことばかり。いつか、ふっと自らその命を断ってしまうんじゃないかと、行き過ぎた想像をする頭を抑えられなかっただけ。それで、仕事中かもしれない彼の部屋に時間も気にせず乗り込んだのが五分前。

「それでわざわざ来てくれたんです?」
「ご、ごめんね…?」

やっぱり、迷惑だったよなあ。慌てて立ち上がって部屋を出ようとする。玄関にいるから履いたままだった靴、と言っても裸足にパンプスなのだけど、それに深くかかとまで潜り込ませる。そこで聞こえたのは「待って下さい」。腕をきつめに掴まれた。

「僕のこと心配してくれたのすごくうれしいです」
「…そうなの?」
「ケド絶対死なないです」

大好きなマンガ書けなくなる方が僕にはツラいです、手塚治虫先生のように病床でも僕はマンガを書き続けます。それに、マンガは勿論ですケド大事なもの置いては死ねません。あ、貴女のことですケド。可愛いんでそんなに照れないで下さい僕まで照れちゃいます。あ、

「もう今度はなーに…?」
「相手が貴女なら女に溺れるのはありかもしれないです?」
「なっ」

死なないことが聞けてよかったと言うより、それ以上のダメージを受けたのは日付が変わる少し前のこと。とにかく死ぬなんてそんなの愚問です!なんて言いながらわたしの手にぴたんと重ねられた少し大きな彼のそれ。心配で冷たくなった手がじんわり温かくなっていく。溶けていく不安が安心感と混ざって、とろり。

20101207


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