人間っていつ思考していないんだろうと思考する。すぐには思い当たらない。あ、寝てる間?それなら夢を見るのは何なのだろう。脳が活動しているなら思考の一種として考えていいのかもしれない。それならノンレム睡眠は、脳が休んでいるのかもしれない。候補一、ノンレム睡眠時。そもそも思考するって何だ?さっきの感じでいくと脳が活発に働いていること、だろうか。でもわたしたち一般ピープルにそれを感じる術はない。ぐるぐると頭を使うとき以外は。わからないな。ああ、でもいまの感覚の思考には言語を使うから、生まれて言葉を内に持つまでの時間は、いまの認識でいう思考というのはしていないのかもしれない。でもそれからは基本的に自分で「いま自分は思考していない」と意識できることはないのだろう。だってそれを意識することが思考することに当たるから。

「どう思うかね」
「そないに頭痛ァなりそうなこと俺には到底わからんしわかろうとも思わんわ」

ぐりぐりと自分の顎を相手の肩に押し付ける。背中にはりついた状態。力を入れたら「もうちょい右や」、わたしは別にマッサージをしてるつもりはない。肩から顔をのけて今度はだらりと背中に身体を預ける。ゆっくり息を吸い込めば、ひとの生きる音がした。こうやってまた思考している。いまは、傍にいるひとのことを。どくんどくん。

「でもまああれや」
「なにー」

ぺたんとはりついた身体をはがされる。そのままわたしがあっためた背中が逃げて行った。あ、待って。逃げて行った背中の代わりに今度は顔がいらっしゃった。おお、これはこれでありだ。両手がわたしの肩に。に、と笑った策士の口。ごつごつした男性の指が肩を押す。わたしの視線はゆっくり上へと散った。相変わらず目の前にはいつもの顔があるけれどお互いの背景が違う。わたしの背中にはベッド。彼の背中には天井。

「なんも思考出来んようにしたろか、とか言ったらちょっとセオリー通りすぎてキモイなァ」
「そうだねぇ」
「それになんも考えられへんとか俺は許さんで」

体勢は数分後のことを想像するには十分すぎる体勢だったけれど動じることではない。彼が楽しそうだからそれでいい。わたしも、そんな彼をとても楽しんでいる。

「俺のことだけ、考えときィ」
「はいはい」

それも十分キザな台詞だよということばは事態のおかしさと一緒に飲み込んだ。相手が相手ならいまの台詞に腰砕けなんだろうなあと顔にかかった金髪を見ながら思考する。わたしにとっても彼にとっても、いまのシチュエーションは、二人でいられることのおまけにすぎないのだ。思ったことを思ったまま口にして、思ったことを思ったまま行動する。甘さ控えめのホットコーヒー。わたしと彼のやわらかな関係を表すのには、それぐらいがちょうどいい。えっと、さっきまで何のはなししてたっけ。

20101129


「#幼馴染」のBL小説を読む
BL小説 BLove
- ナノ -