Stand by...

02



「そっ、そうじゃなくて…。ま、まさか、ないのか…?」
「調理場にあると言ったはずだが?」
「おい、今まで従属させた人間、どうしてた…?」
「愚かな。この屋敷まで来る君のような無鉄砲がそうそういるものか。ここに住まわせた人間は、君が初めてだ、クロウ」
「ッ!」

 ワイズが淡々と言うと、クロウが息を呑むのが判った。
 何に衝撃を受けたのかは判らないままだが、兎にも角にも飢えを満たしたい。

 ワイズは唖然としているクロウを肩に担ぎ上げ、喚き暴れるのも構わず、とりあえず床に柔らかな絨毯の敷いてある応接間へ連れ込んだ。
 クロウを攻める際に彼の背中が痛まないような設備のあるところならばどこでも良く、そこが1番近かった。

 毛足の長い暗紅色の絨毯に下ろした途端、がばりとクロウが起き上がり、逃げようとする。仕方なくワイズは血に動くなと命じた。

「ぅぎッ! く、お前っ…またなんかしやがったな…っ」
「君が無駄な抵抗をするのがいけない。君もハンターをしていたなら覚悟くらいしているだろう。潔く血を捧げるんだな」

 以前も思ったことだが、クロウは非常に意志の力が強い。
 普通の人間ならかなりの時間自由を奪っていられる従属からも、思いがけない早さで脱することがある。

 ワイズはリボンタイを外し、血の束縛に抗おうとぶるぶる腕を震わせているクロウのそれを掴み、がっしりとしたソファの猫脚に縛りつけた。

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