Stand by...

01


 昨日クロウをひたすらに犯し、捕らえてから、ワイズにはすっかり人間を襲おうという気はなくなっていた。

 ただ、クロウが傍に居ればいい。そう思う。

 だからワイズはクロウに広い部屋を与え、何不自由なく暮らせるように腐心した。
 従属させたクロウの血には、敷地から出ないよう命じてある上、館のそこここにその令を改めて血に刻む術は施してあるが。

 向けられる視線が憎悪であっても構わない。

 それほど、金糸の髪と蒼の双眸を持つ天使のような姿の青年に、幾年もの年を経た吸血鬼たるワイズは惹かれてしまっていた。

 だが。

 ワイズは従属する血の匂いを目当てにクロウを探す。廊下の途中で見付けた彼もワイズに気付くと、一瞬戸惑うような眼をしてから、睨んできた。
 その強い眼に、ワイズは躯の芯が熱くなるのを感じた。

――そう。

 そんな甘い感情を抱いてなお、クロウはどうしようもなくワイズにとっての『食事』、つまり、『欲望』の対象だった。

「何をしている? この時間帯は私の食事時間だから、部屋に居るようにと言っておいただろう?」
「知るかよ。それより──な、なぁ、この屋敷、手洗いってどこにあるんだ…?」

 かぁ、と少しクロウの頬に朱が昇る。
 ワイズは首を傾げた。

「水なら調理場にあるだろう。今、手を洗う必要があるとも思えんが」


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