Are you NOAH?

01


 ジョギングのコースを変えたのがまずかった。
 いつものように川原を走るだけにしておけば良かったのだ。

 山というか、小高い丘というか。その上にあるのはサナトリウムだけで、そこへ通じる道は1本。
 往復すればいい運動になるだろうなんて思ったのが間違いだったのだろう。
 行きはよかった。左右を木々に囲まれた道は、走っていても心地よかった。

 しかし、灰色のサナトリウムを見上げて復路について、恐らく半分も行かない場所に、突如それは現れた。


 ドデカイ水溜り。


 1本しかない道を塞ぎ、迂回しようにもかなりの範囲に渡って広がり、しかも斜面の途中にある道は、そこから外れると足を滑らせ転落しそうなのだ。

 水溜りくらいなら踏み越えても良い。
 だが、雨もないのに突然現れたそれは、もしかしたらただの水じゃないのかもしれない。だとしたら、うかつに足を踏み入れるわけにもいかない。
 範囲が広くて跨ぐことも出来そうにない。

 季は困ってイヤーフックを外し、首に掛けたタオルで汗を拭いながら、水溜りを観察する。

 何も変わったところはないように見える。

 そっとしゃがみ込む。季の顔が僅かに水溜りに映る。


「ただの、水か…?」


 例えば鳥の巣箱に溜まってたのが落ちたとか。いや量が多過ぎる。

 手近にあった枝を右手に取り、季は水溜りに差し入れた。

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