カミツキ!

08



『駄目だ。さぁシオリ、まだ愉しむぞ』


 なにかがふわりと覆い被さるような感覚があって、途端に『痼り』と乳首が燃えるみたいに激しく熱く揺さぶられて、梓織は完全に意識を失った。



   §



 それからの日々は梓織にとって地獄だった。

 通学路のそこかしこで前触れもなく『痼り』が『動き』、梓織の指は場所も時も弁えず自らの乳首を捏ねる。

 他者にバレないように声や躯を抑えるのに必死で、一瞬たりとも気が抜けない。

 しかも強過ぎる快感は続くのに射精は妨げられたまま双球は重くなる一方で、気が狂わんばかりに脳内が色欲に染まる。

 なにより困るのが。


「ぅーわ、梓織お前乳首掻きむしったろ」
「え」


 体育の授業の前、無造作にシャツを脱いだら親友が呆れたような声を出した。

 見れば、薄い褐色だった乳首が毎日絶え間ない刺激によって赤ピンクにぷっくりと腫れ上がっていた。

 今も、じん、じん、と刺激を求めて尖り震えている。


「ぁ、ッそ、そうそう。なんか擦れてさ! か、痒くて寝てる間にガリガリやっちゃったみたいで」
「お前これやり過ぎだぞ、痛そう…」
「ぁ…っ」


 まじまじと親友が震える乳首を見つめる。その視線さえぴりぴりと刺激になるような気がして、よりつんッと尖ってしまう。


「っば、そんな見るなって。変態かよ」
「あ、悪い悪い。男の乳首と思えないくらいになってたからさ。こんなんなるんだなーって知的好奇心で」
「あっはは、うるせー」
「はっは、いやいやほんと、エロ動画みたいな、」


 互いに笑いあった途端、きゅんッ、とまた腰の奥が疼いた。


「んッ…!」


 恥ずかしい乳首になり果ててしまったのも困る。けれど、なによりも。



 『神』は、親友や級友との交流を嫌う。



 だから彼らと共に居る時、最も性感を弄り、よがらせようとして来るのだ。

 そうなればもちろん、梓織は彼らから離れざるを得ないから。

 唯一彼らの側は、梓織にとって色欲から意識を切り離せる場であると言うのに。


『懲りんな、シオリ。そんなにはしたない姿を晒したいのか』
「ち、ちがッ!」
「な、な? し、梓織?」
「ッ、ぁ、ごめっ、ちょ、ちょっと俺っ、早退するッ…!」


 急いで体操服を着込み、更衣室を飛び出した。

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