ドミネイトユー

01


 そうして勇者は魔王を倒し、世界には平和が戻りました。
 めでたしめでたし。



 おとぎ話は、そこでおしまい。
 けれど勇者と魔王の物語は続いている。



「じゃあ宿で待ってますんで。早めに戻ってくださいよ、勇者様」

 時は双方満身創痍になりつつ武力で魔王を倒し、勇者の一行だけが傷を癒した直後まで遡る。

 パーティメンバーを先に帰らせ、勇者アズは魔王城に傷付いた魔王とふたりきりになることを希望した。
 勇者だけが持つ、魔族を服従させることができる聖なる紋章を使うために。


「さて、と」


 謁見の間らしく毛足の長い絨毯と玉座しかない場所で、息も絶え絶えの魔王へ振り返り、にやと勇者は勇者らしからぬ笑みを向けた。

 膝をつく魔王の前にしゃがむと、彼も最後の矜持で忌々しげに口角を上げた。

「聖なる紋章、か。実に貴様ら人間らしい傲慢な名だ」
「確かに。しかもかなり制限も多くてな。あんたみたいな強敵相手じゃ、こうして物理で弱らせてからじゃないと効きゃしねぇし、デカ過ぎる範囲の命令だと通らねぇ」
「使うなら早くしろ。でないとまだ貴様ひとりごとき、縊り殺すくらいはしてみせるぞ」
「ああ、そりゃ困る。なんせ俺はあんたをぐちゃぐちゃに犯したいからな」

 勇者が言い放った台詞が全く飲み込めず、魔王はぱちぱちと瞬いた。

「…は?」

 勇者はにやにや笑って聖なる紋章の浮き出た右手で魔王の舌を掴み出すと言った。



「『魔王グリムハウト。あんたはこの勇者アズのちんぽをしゃぶるのが魔族全体にとって最も重要なことだと思う』」



 紋章が光り、強く部屋を光で白く満たしたあと──触れられた場所に刻印がついた。
 もちろんすぐに魔王は勇者の手から逃れる。

「よし、これくらいなら『入る』な。さ、これであんたは俺を殺せねぇな?」
「そ──」

 ドクン、と。
 魔王の視界がぶれた。

 考えたくもない、のに。

 目の前の勇者の男性器をしゃぶる事が魔族の利になるとしか思えず嫌悪感が込み上げるのに、それを思うと勇者を殺す選択肢が、消えてしまう。

「ぅ、く…」
「あーイイ、そのカオ堪んねぇ…。いやホントあんたを見た途端にもーずっと犯したくて」


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