犬が舌を垂らすとき

10



「ぁ…ふ…、は…っはぁ…っ」

――終、った…。

 がっくりと全身の力を抜いたシラの視界に、けれど男の脚が映った。飼い主のものではない。

「ぁ…?」

 視界を上げた先には、客の男が性器をガチガチに勃起させて、シラを見下ろしていた。
 ガラスの向こうから、飼い主の声がする。


「お客様は、まだいらっしゃるよ、シラ」


 シラの白い髪を、こめかみから手を差し入れて、客の男が梳いた。
 涙に濡れた目で、シラは懸命に男の性器へと手を伸ばした。

「はい、ご主人さま…。お客さま、ぼくの躯で…気持ちよく、なって下さい…」

 そして再び、赤い舌を垂らす。



end.

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