Start A Family 02 ぎゅうう、とガランの手に力が篭った。 「ぼ、僕のお嫁さんになって下さい!」 「…」 一瞬、フェイの中で時が止まった。 「――は?」 数拍してようやく我に返ったフェイは、そう呟くので精一杯だった。 だっていくら黄緑色の髪をしていようとも、ガランはどう見ても男だし、何よりフェイ自身も男なのだ。 しばらく悩んで、「悪ぃけど…」と切り出す。 「俺は男だから、多分あんたの――ガランの嫁には、なれないと思う…」 相手は精霊だ。極力怒りを買わないような言葉遣いをする。 ガランは怒らなかった。 だが、引き下がりもしなかった。 フェイの手をぎゅうと握り締めたまま、子供のような顔で「大丈夫!」と言い切った。 「僕の母さまもフェイみたいな人間だった。僕はちゃんと母さまのミルクで育ったんだ」 「いやそれはきっと女…って、母さま? まさか、嫁って」 ガキを生むってことか? フェイが問うと、ガランは花が咲いたような笑顔を返した。 「そうだよ!」 「ムリムリムリ絶対無理!!」 即座に否定したフェイに、少しだけガランは眉をひそめる。そして、突然ぎゅうとフェイの身体を掻き抱いた。 「やってみなきゃ判らないよ」 「判る! 判るんだよ! 俺の身体はガキを産む構造になってねぇ!」 逃げ出したいのにそれも叶わず、ぎゃんぎゃん喚くしか手がない。 ガランの眉間のシワが深くなる。 [*前] | [次#] 『幻想世界』目次へ / 品書へ |