Start A Family

01



 一目惚れだった。

 最初は近付く者なら誰でもいいと思っていたのに、彼を一目見た瞬間、彼以外は考えられなくなってしまった。

 彼がいい。
 彼が欲しい。

 思い始めると止まらなくて、蓄えた力を少し使って、人型を取った。
 彼に近付くために。


***


「こんにちは…!」

 急き込んだように声を掛けられ、フェイはぎょっとした。森の奥深く。自分以外に人がいるなんて思ってもみなかった。

 振り向いて、更にぎょっとした。確かに人の男の姿はしていたが、それは明るい黄緑色の髪をしていた。
 そんな髪色の人間を、田舎の村で猟師をやっているフェイは、見たことがなかった。

 どうしたら良いか判らずに立ち竦むフェイに、黄緑髪の男が近付く。

「あ――あんた、精霊の類か…?」

 フェイの村は自然に囲まれ人里から隔離されたような場所にある。そうした伝承もまだ色濃く残っていた。
 フェイの言葉に、ぱぁっと黄緑髪の男は顔を明るくした。

「す、すごい、判ってくれるんだね…! ぼ、僕はガラン、古代樹の精だよ」

 見た目の年齢はフェイより少し上程度なのに、言葉遣いはまるで子供だ。
 どこか興奮したその様子に訝り、フェイは首を傾げてガランと名乗る精霊を見た。

「…で? 精霊が俺に、なんの用?」

 くしゃくしゃと鳶色の髪を掻き回すフェイに、ガランは急に真面目な顔をして、フェイの手を両手で取った。

「あ、あの、お、お名前は…?」
「は? …フェイ、だけど」
「ふ、フェイ! あのっ、あのっ、」


- 247 -
[*前] | [次#]

『幻想世界』目次へ / 品書へ




 
 
×
「#エロ」のBL小説を読む
BL小説 BLove
- ナノ -