Start A Family 01 一目惚れだった。 最初は近付く者なら誰でもいいと思っていたのに、彼を一目見た瞬間、彼以外は考えられなくなってしまった。 彼がいい。 彼が欲しい。 思い始めると止まらなくて、蓄えた力を少し使って、人型を取った。 彼に近付くために。 「こんにちは…!」 急き込んだように声を掛けられ、フェイはぎょっとした。森の奥深く。自分以外に人がいるなんて思ってもみなかった。 振り向いて、更にぎょっとした。確かに人の男の姿はしていたが、それは明るい黄緑色の髪をしていた。 そんな髪色の人間を、田舎の村で猟師をやっているフェイは、見たことがなかった。 どうしたら良いか判らずに立ち竦むフェイに、黄緑髪の男が近付く。 「あ――あんた、精霊の類か…?」 フェイの村は自然に囲まれ人里から隔離されたような場所にある。そうした伝承もまだ色濃く残っていた。 フェイの言葉に、ぱぁっと黄緑髪の男は顔を明るくした。 「す、すごい、判ってくれるんだね…! ぼ、僕はガラン、古代樹の精だよ」 見た目の年齢はフェイより少し上程度なのに、言葉遣いはまるで子供だ。 どこか興奮したその様子に訝り、フェイは首を傾げてガランと名乗る精霊を見た。 「…で? 精霊が俺に、なんの用?」 くしゃくしゃと鳶色の髪を掻き回すフェイに、ガランは急に真面目な顔をして、フェイの手を両手で取った。 「あ、あの、お、お名前は…?」 「は? …フェイ、だけど」 「ふ、フェイ! あのっ、あのっ、」 [*前] | [次#] 『幻想世界』目次へ / 品書へ |