淫妖奇譚 参

09


 薄い舌が、ふぐりを転がした。

「っひゃあ! ちょ、やめっ、いいから! 大人しく寝てりゃ治る!」
「煩い」

 狗の鼻息がまらにかかって、だんだん妙な気持ちになる。
 あれだけ犯されて、あれだけ絶頂したはずなのに。

「ちょ、まっ、ぁん、ゃ…っ、なんで、お前今日、優しかったのにっ…」
「具合の悪い人間とまぐわうのはやめた方がいいかと思っていたのだが、お前はあんな糞河童に自ら脚を開いたからな」
「おまっ、見て?! つかあれは不可抗力ッ…!」

 双葉の反論は、三度目の「煩い」に殺された。
 まらや蕾まで舐め回されて、その熱い感触に双葉はびくびくと震える。
 犬神もすっかりその気らしく、弱った双葉を容赦なくうつぶせにして、蕾にまらを押し当てた。

 その熱さ。

「ふぁっ…」

 ヒクン、と蕾が動いてしまう。
 少し、本当に少しだけ、──期待、してしまっている自分に、双葉は気付いた。

「ぅ、そだろ…ッ?!」

 愕然とする。そんなはずがない。
 慌てて双葉は残った正気を掻き集めた。

「ちょ、待て! 今回お前、俺を助けてないだろ! なんでっ…!」
「お前は私のものだからだ。河童如きに図に乗られては適わん」
「ぅあああっ…!」

 河童とは違う、熱いまらが穿ってくる。
 じわじわと中が溶けるような、そんな熱さ。

 浮かび上がってくる生理的な涙と共に、双葉は思わず嬌声を漏らした。

「あぁっ…、あ、ぁんっ、あッ…あつ、い…っ」

 背中に覆い被さるようにした狗の毛が、体温が、今は、今だけは、心地よかった。



end.

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