淫妖奇譚 参 08 「ひぁあああっ! ぁう…っ、ぁ、う…っ」 あまりの量の多さと、そしてその冷たさに、双葉は悶える。 けれど河童は気にした様子もなく、息を整えながら笑ってみせた。 「ありがとう、芳華。私も君の魂に住まいたいところだけれど、彼が許してくれなさそうだからね。ここにいるよ。ただ、喚べばいつでも駆けつけてあげる。いいね…」 「…へくしゅっ! ふぁ?」 くしゃみと共に目を覚ますと、綿入れの中だった。 「ぁ…? え…?」 「寝ていろ」 起き上がろうとしたとき、茶色の狗が傍に寄って来て言った。犬神。 「ぇ…? え? なんでお前出てんの…」 「糞河童がお前を運びがてら、看てやれと引きずり出しおった。腐っても神だな」 淡々と言いながら、口に咥えた濡れた布を、犬神は双葉の額に置いた。 熱いようで寒い。 それを告げると、犬神が呆れたような顔をした。 「当たり前だ。体調が悪いのに水遊びなどするから、熱が出た」 「…したくてしたわけじゃ…」 「煩い。大人しくしていろ」 そう言って足元の方へ移動していく犬神を見送って、今回は言うことを聞こうと双葉が反省したとき。 ごそりと、犬神が綿入れの中に潜った。 「ぅあ? ちょ、なにしてっ…!」 「人間というのは、熱があるとき汗をかけば良いのだろう。手伝ってやる」 そう言えば綿入れの下、双葉は裸のままだった。犬神が服を着せられるとも思えないから、当然だ。 犬神の毛が内腿に触れて、びくんと跳ねる。 [*前] | [次#] 『幻想世界』目次へ / 品書へ |