青木と後藤 小話集 甘い聖夜 折角のクリスマスなので。 エロなし。 繰り返す、エロはない!(`・ω・´)キリッ 「メリークリスマス、先生」 終業式も終っているからと、奴の自宅に呼ばれて、玄関を開けるなり、これだ。 本当に後藤はこういう、イベント事が大好きだ。 「…メリークリスマス、後藤」 本当に、良くない。 なにが良くないって、俺も後藤の家へ行くのに、少しずつ、慣れてきていることが。 ついでに。 後藤の機嫌を損ねないようにって、わざわざプレゼントなんか用意してしまっている、俺が。 「ほら」 いつかのように玄関で押し倒されないように、素早く渡す。 けれど後藤は、ぽかんとした。 本当に、本当に、予想外だった、って顔で、立ち尽くす。 「…え」 「え、って」 「え、え、嘘」 「う、嘘じゃない、けど要らないなら返せ」 「うっううん! 要る! あっ、ありがと、先生…!」 「…」 本当に。 後藤は、思いがけず与えられる『好意』に、弱い。 普段、どうでも良いようなところには散々策略張り巡らせている癖に、こういうところは、驚くほど、素直なままで。 (…くそっ、しっかりしろ青木啓介!) 可愛いとか思ってはいけない。 コイツにこれまでなにをされてきたか思い出せ! いや思い出すな俺!! 極力平静を装いつつ靴を脱いで、そして実に普通に用意されていた食事を共にして。 その間、後藤は俺が贈った時計(室内用! 持ち運ばれて言いふらされたら困る!)を、何度も嬉しそうに見ていた。 (…く、) ぐらぐら揺れる、俺。やばい。俺も、こういうのに、弱い。 「…そっ、それじゃ、俺はこれで」 流される前に帰るしかない。思いがけずプレゼントまでもらったわけだし、今日くらいは、もしかしたら、 「帰る前にさ、…せんせ、キスして?」 「…え」 「おねがい」 『帰る前に』ってことは、帰っていい、のか? いやいや、学習しろ俺。これは絶対罠だ。罠だ、判ってる。 分かってる、が。これを拒絶したらまた酷い目に遭うのではないだろうか。 ぐるぐる悩む俺を、ただ後藤は見上げてくる。いやいや、おかしいだろう。俺達別に付き合ってるわけじゃないし。でも、でも。 「…っ、」 悩みに悩んで、俺は後藤の肩を軽く掴んで、そ、と触れるだけのキスをして。 「ッ!?」 突然の脚払いに、視界が回った。 ぼふ、と沈む先は、リビングのソファ。驚く隙に、にこ、と後藤が俺の腹の上にマウントポジション取って、笑う。 「たくさんくれてありがと、先生。すっごい嬉しい」 「そ、そうか、で、後藤、これは」 「うん。俺先生になにもあげてないから、お返し」 「い、いや、えっと」 「気持ち良くしたげるね? 先生、好きでしょ?」 「いッ、いやいや! 後藤! っく、ゥ」 拒否しようとした途端、股間を揉みしだかれて喉が反った。その喉仏に、ちゅ、とキスを落とされる。 「大丈夫。もう少ししたら、うずうずしちゃって車なんて運転できなくなっちゃうから」 「ッ!? おまっ、まさか料理に…!?」 「俺からのプレゼントだよ」 甘いだけの聖夜など、俺達にはやはり、望むべくもなかった。 end. [*前] | [次#] 『学校関連』目次へ / 品書へ |