嘘はいけません

06


 膝を曲げて震えた俺に、断定の口調で後藤が言う。
 さ、と躯が冷える。なんだこいつ、どうしてそんなことが判るんだ。

 恐くなって、咄嗟にかぶりを振ってしまった。

「し、知ら――ない」
「先生、子供じゃないんだから。そんな嘘、つかないで下さいよ」

 硬直。

 背後から、声。
 後藤ではない、声。
 聞き覚えの、確かにある、声。


「あ――ああぁ…ッ」


 躯が震える。快楽などでは当然なく、羞恥でもない。

 それは間違いなく、――恐怖、だ。

「あぁ、それともあれですか? 僕からは逃げて、後藤には素直に股を開くことへの言い訳ですか?」

 声が、真後ろまで来る。

「傷つくなぁ。逃げなくても言ってくれたら、僕だってやめたのに。『後藤のち○こじゃなきゃ嫌なんだ』とかさ」
「――ッ!!」

 ねぇ、と回り込んだ声の主・岡部の手にあるものに、声にならない悲鳴が迸った。

 小型のビデオカメラ。撮影中を示す赤いランプは、ばっちり点灯していた。

 懸命に逃げようと足掻くが、岡部に顔を掴まれ、後藤にア○ルを舐め回されてどうにもならない。

 音声とモーション付きで、俺への脅迫材料がどんどん蓄積していく。

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