人形とダンスを

02


 だが鷹は手を放さない。クラスメイト達がガタガタと机を動かし、教室中央に空間を作った。
 「?」表情のない顔のまま、樋野がその姿を見つめている。

「先生、俺らね、土日まで学校に閉じ込められて、色々溜まってんだわ」
「……お疲れ様」
「だからさ、先生。樋野先生。発散する、相手をしてよ」

 普通ならばフクロにされるかと恐怖を抱いてもよさそうなシチュエーションだが、鈍感なのか冷静なのか、樋野は全く動じない。

「…さすがアイスドール」
「それで?」

 鷹の呟きは耳に入らなかったらしい樋野が、続きを促してくる。

 クラスメイト達がにやにやと笑う。鷹は腕を引いて、遠心力でクラスメイトの輪の中に樋野を引き込んだ。
 すぐに樋野は背後からはがいじめにされ、ろくな抵抗をする暇もなくジャケットを開かれ、シャツのボタンを引き千切られ、スラックスを脱がされた。
 そこまでされると、さすがの樋野も青い顔をしていた。

「な、なっ…?」
「怯えてるぜ、かっわい〜亅
「大丈夫だよ、樋野っちー」
「おい、寝かせろよ」

 特選クラスは28人いる。その全員が今、飢えた獣のような眼で樋野を見下ろしていた。

「何をっ…! や、め…っ!」
「大人しくしててよ先生。何をしろとかは言わないからさ。ただ俺らも発散したいだけだし」

 鷹の台詞に、周囲の生徒が肯く。

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