人形とダンスを

01


 鷹の通う男子校には、寮生のみで構成された特別クラスがある。
 寮生の中でも更に成績の良いものだけを集められたその通称・特選クラスに、不本意ながらも鷹は所属していた。

 選抜され、クラスへ入るかどうかの意思確認は一応あるのだが、入学して訳も判らない頃にいきなり言われて、おおよその生徒が適当に肯いてしまって後悔するのが通例だ。もちろん鷹もその内のひとりである。

 不本意であり、不満も積もろうと言うものだ。

 ただでさえ男子校。ただでさえ寮生活で、つまり強制的に禁欲的な生活を強いられているのだ。
 それに加えて、鬱憤を晴らすための週末の休暇すら、特別授業があるというのだから、堪らない。むしろ、溜まる。色々と。

 だから、発散することにしたのだ。

 標的は、本日土曜日の最終講、古文担当の樋野。
 ひょろりとした細身の男で──ちなみに教師も全員男だ──、そこそこ整った顔つきをしている。
 だが、破滅的に愛想がない。笑えば人気も出るだろうに、やる気があるのかないのか判らないような顔で、いつも淡々と授業をする。
 一部の生徒にはアイスドールなんて異名をつけられているくらいだ。

 だからこそ、鷹は──鷹たちは、樋野を選んだ。

 今日も淡々と授業を終えた樋野が、教室を出て行こうとする。
 鷹は駆け寄ってその腕を掴んだ。

「先生。授業も終ったし土曜だし、遊びましょうよ」
「……教師なんて放っておいて、羽を伸ばすといい」

 言っていることは優しいのだが、やはり顔は無表情なままだ。

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