イケナイコト

03


 きょろりと誠の視線が泳いだ。

 身体が――躯が、ざわつく。何故だろう、この衝動を、無性に誠にぶつけてやりたいと感じた。
 押し潰された煙草を誠の前に突きつけ、距離を詰めるふりをして、片方の手で哲太はドアの鍵を掛けた。

「イケナイコトしてたんだよ」
「は、…ぇ…?」
「知られたからには、お前にもイケナイコトしてもらおうかな」
「え、え、あ、あの、僕、気管支弱くて――…」

 わたわたと言い訳をする誠の顎を掴んで、開いたままの唇を奪った。
 吸殻がぽとりと落ちて、誠の目が限界まで見開かれる。あまりの驚愕に、抵抗も出来ないらしかった。

 心臓が煩くて、哲太はその音を聴くまいと誠の口内を蹂躙した。

 ちゅく…ちゅぷ、くちゅ…くちゅ、ちゅるっ、

 たっぷり唾液を混ぜ合わせて、硬直している舌を嬲り、口蓋をくすぐり、歯列をなぞる。
 茫然としていた誠の眼が次第に蕩け、頬が赤く染まる。

 長いキスを終えると、ふらりと誠はよろめき、ドアに身を預けた。
 哲太は自分の唇を舐めて、にやりと笑って見せた。

 楽しいと、感じていた。誠にこんなことを強要していることが、煙草よりもずっと満たされる感じがした。

「どうだよ優等生。煙草の味はしたか?」
「ぁ、…あじ…?」
「はッ。ディープキスは初めてか? もしかしてキスもしたことねぇとか?」

 飲まされた唾液のことを思い出してしまったのだろう、顔を真っ赤にする誠に畳み掛ける。

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