イケナイコト

01


 品行方正、真面目が服を着て歩いているような、黒髪に眼鏡の優等生。
 おっとりしていて、どこか抜けたところがあるためにとっつきやすく、誰からも人気がある優男。
 名は藤枝 誠。

 そいつが、哲太は苦手だった。

 こちらはと言えば、授業はサボる遅れる眠るフケるは当たり前の、ポケットに煙草常備な所謂不良だ。

 合うはずがない。正しく言うなら、話したこともない。
 哲太が一方的に避けて、接触しないようにしているのだが。

 だってあいつ、誠の空気は落ち着かない。近くにいるだけでもそわそわして、なんだか煙草が吸いたくなる。
 特に、月に一度の席替えで、誠の隣になってしまってからというもの、ただでさえ聞いていない授業が、全く耳に入らないのだ。

 ちらりと横を見る。
 綺麗な姿勢で黒板を見つめ、ノートにペンを走らせる誠。

 ざわざわと気持ちがさざなみ立つ。いたたまれなくなって、哲太は席を立った。いつものことなので、もはや教師も何も言わない。哲太は振り向きもせずに、教室を後にした。




 そして来るのは男子トイレ。洋式の個室に入り、カバーをしたままの便座に座って煙草を取り出した。
 吸殻は水に流せばいいし、換気扇は回っているし、学生が隠れて吸うならやはりトイレだろう。

「ッはァー…」

 一服すると、気持ちは落ち着く。だが、なんだか身体がそわそわしたままだ。

――なんだってんだ…。


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