in 【化学室】

香川 聖夜の場合 1


※(尿道責/異物挿入)

 歩く度に、首元のチョーカーに揺れる鈴が小さくちりん、ちりんと鳴る。
 聖夜にとって、好きだという感情はそんなになかった。ただよくしてくれた。こちらの態度にも関係なく、親しくしてくれた。それで、聖夜は真尋に懐いたのだ。

 彼の骨張った手に頭を撫でてもらうのが気に入りになった。
 認めてもらえる気がした。
 野良猫が居場所を見つけたような、そんな気がした。

 けれど。だからこそ、いつものように真尋に会おうと化学室を覗いた聖夜はすぐに己の縄張りを荒らされたことに気が付いた。己の心地よい領域を犯されたことに。

 実験台の上に放り出された白衣。泣いたのだろう、彼の白い肌に赤い目元はよく目立った。
 そこに漂う色香とも呼ぶべきフェロモンに、気付かない雄は居ないだろう。

 ちり、ん。

 部屋を覗き込んだときに鳴った鈴に、真尋が顔を上げる。その表情には明らかな怯えがあったけれど、聖夜は構わずにいつも通りの身軽さで彼の傍へと歩き寄った。

「く〜ろせーんせっ」

 無造作に跳ねさせた黒髪が視界の端で揺れる。それくらいに、軽い足取りで。
 なにも気付かないふり、は、できない。

「ど〜したの? にゃんか悲しいことでもあった?」

 そう言って、目尻の涙の痕をねっとりと舐めた。「っ!」びくっ、と真尋が反射的に身を捩るのは至極当然。

「かっ、香川!」

 手で振り払おうとする真尋の手首を捕まえて、聖夜はスツールに座る彼の腿に跨り、抱きつくようにして彼の頭部を絡め取る。

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