イラスト

オマケSS


 

***
 目を覚ますと、全身を気怠さが襲った。
 狩衣は腕に引っかかっている程度で、それ以外は完全に剥かれてしまっている。
 柔らかく手に触れるこれは……。考えたところで、それが犬神の毛並みであることに双葉は思い至った。
 当の妖は、満足気に目を瞑っている。双葉を守るように長い尾が双葉の身体を取り巻く。

(…いぬがみ、)

 そう言えば、この妖の個体名を知らない。ぼんやりと双葉はそんなことを考える。
 使役していいと言った。ならば、双葉がつけてしまってもいいのだろうか。
 それとも、きちんとした名が、あるのだろうか。
 知りたいと思った。個体名さえ知れば、こいつに躯を好き勝手されることもなく、陰陽師として、見返りなど求められずに使役できるのではないかと思って。

 だが。

(…やっぱ、やめた)

 名などつけてしまったら、本当にこの妖を使役すると認めてしまうことになる。そして名を呼んでなお、押さえ込まれ、犯されてしまったら。
 身震いして、双葉は狩衣を掻き寄せ、もう一度瞼を閉じた。

(…絶対認めねぇ)


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