in 【化学室】

吾妻 晃善の場合 1


※(挿入なし/乳首責め/言葉責め/亀頭責め)

「なーんか物足りないな、なぁあき」
「どっかで1on1でもしていかねー?」

 大会が終ったばかりだからと、微調整で終った部活後、方々から掛けられる声に晃善は軽く笑う。

「悪い、今日はやめとくよ」

 実は先日の大会で軽く足を捻ったようだったから、無理はしたくなかった。保健室で湿布でももらおう。ついでに折角だからあのひと──黒川真尋の様子でも覗いてみようと思ったのは、ただの気まぐれだ。

 晃善の不参加を惜しみながら帰っていくバスケ部の面々と別れ、通りかかった化学室。
 理系科目が得意な晃善を、友人達と同じように『あき』と呼んで嬉しそうに笑うあの無防備な教師のことが、以前から少し気になっていた。

(どうした、あき?)

 兄貴風を吹かせる優しげな顔に、確かに感じていたのは征服欲。苛虐心を伴う欲情。


──いつか、啼かせてやりたい。

 鬱屈した欲望ではなく、ただ前向きに素直に、そう感じていた。


 だからたまたまそのときが来たのだと、化学室の窓を何気なく覗いて知った。

 のろのろと実験器具の用意をする真尋の白衣はシワだらけで、時折不自然に腰が跳ねる。眼鏡の下の瞳はどこかぼんやりと虚ろで、腰が揺らめくと同時に眉がひそめられるのが、その目尻が赤く染まっているのが、雌の色香を漂わせていた。

 どんな声で啼くのか。
 不謹慎な愉しみに、晃善の口角が上がる。

 軽くノックをして、化学室へ踏み込む。

「、あき…」
「珍しいね、先生。ひとり? いつも誰か居るのに」

 だからいつも、機会がなかったのに。
 おそらく──いつも居る『誰か』に、雌にされたのだろう。びくりと真尋の肩が震える。

 まだ肌寒い時期だというのに窓が開け放されているが、染み付いた匂いはすぐに消えるようなものではない。
 思考が上手く働いていないのだろう、晃善の理由のない訪問にも反応らしい反応も示せず、真尋は近付く晃善を見つめる。
 くす、と思わず苦笑が零れた。


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