羊歯の檻

08


 友人を気遣い、ゆっくりと取っ手を引く遊糸は、もちろん知らない。アナルパールは、ゆっくり抜かれる方が排出の感覚が焦らされて、感覚が増強されてしまうということを。

 確かに内臓を引きずられるような感触はそれほど味わわずに済むものの、じわじわと蕾を開発されていくような感覚には陥る。

 ちゅぽんっ、ぐぐっ…ぐ、ぐぐ…っ、ちゅぽ、ぐぐっ…ぐぐ、ちゅぽッ、

「やぁあッ! ひァんッ! ひ、ぃ…っぁ、ぁ、ぁ、やッ! ぁふっ…ぁっアぁんッ!」

 霙の嬌声に遊糸は耳まで赤くしながらも、必死に性玩具を抜いた。

 ちゅぽっ…

「ぁふっ…は、はぁ…ッあ…」

 最後の球体が抜ける。すぐさま遊糸は手を抜いて、それから霙に向けて頭を下げた。

「ごめん…ごめん、霙…っ」
「…は…ゆーし…」
「彼の制服は君の部屋に置いてあるよ、遊糸」
「っ…」

 あの南京錠のついた部屋を、霙に見られるのか。そう思いはしたが、躊躇ってはいられない。
 早く、霙を『元の世界』に帰してやりたかった。『異常』なのは、自分だけで充分だ。

 なんとか霙を立ち上がらせ、部屋に連れて行く。霙が着替える間は、遊糸はドアの外に座り込んで待機した。鍵を掛けられたりするわけにはいかない。




 こんこん、と内側からノックの音がして、ゆっくりと服を着直した霙が顔を出した。虚ろだった表情は、少しずつだが普段のものに戻ってきている。そのことに遊糸はほっと息を吐いた。

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