羊歯の檻

06



「霙、その…な、なんか、入れられたか…?」
「ン…は、いっ、てる…」

 虚ろな表情のまま、霙が肯く。ひゅ、と遊糸は自分の喉に息が詰まるのを感じた。

 キッ、と音のしそうな速さで橘を睨むと、橘は悠然として「お友達には、もう何もしないよ?」と遊糸の揚げ足を取って微笑んだ。言われなくても、これ以上橘に霙を穢させるつもりはない。

 もう一度友人に振り返り、震える手で、霙の頬に触れる。

「手、解いたら…自分で、抜けそう、か…?」

 想像するのもつらい。あんな感覚を、霙にも味わわせなければならないなんて。

 自分で抜けるなら、調整も出来るだろう。
 遊糸が見なければ良いのだし、橘は――遊糸が、囮になって注意を逸らしておいても、いいと思った。

 その反面、無理だろうとも思う。自分なら出来るかと言えば、きっと出来ないと答えるに違いない。何せ、霙はあの感覚を知らないのだ。

「む、り…と、思…」

 予想通り、少し頬に色味を戻した霙が、力なく首を振った。「だよ、な…」遊糸は肩を落とし、もうひとつの布紐を解いた。
 霙の手足を自由にして、赤くなった痕にそっと指を這わせる。謝っても償い切れない思いで、顔が上げられない。

「…霙。…中の、な。俺が、出す、から」
「ぅ、…うん…」


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