羊歯の檻

05


 ようやく片方の紐が解けたとき、「ああそうだ」と向かいのソファに腰掛け、悠然とその様子を眺めていた橘が言う。

「な、んだよ…」
「…なんだよ?」
「…くッ…、な、なんですか…」
「いずれもっとちゃんと躾をしような、遊糸。その子…霙くんのお尻を見たかい?」

 突然言われた台詞に、かあっと頬に血が昇った。

「みっ見るわけねぇだろ! 友達だぞ?!」

 顔を真っ赤にして反駁する遊糸に、橘はただにやにやと笑う。
 つい、と指を伸ばして、今は遊糸のジャケットで隠れた霙の股間を指す。

「見るといい。遊糸、君にも使ってあげた玩具が、奥まで入っているから」
「なッ?!」

 あっさりと言われて、咄嗟に霙を見る。だが陰部は隠れたままで、霙自身は意識があるのかすら危うい。

 確かめたいが、確かめたくない。

 戸惑う遊糸を余所に、橘はただただ楽しそうだ。遊糸がどうするのかを面白がっているのだろう。

「ッ霙――…!」

 仕方なく、肩を揺すって霙を呼んだ。
 この場の記憶など、意識など、ない方が良いに決まっているのだが、そうするより、遊糸にはなかった。
 躯が揺れた途端、ヒクンっ、と霙の眉が寄り、霙はぼんやりした目でなんとか遊糸を捉えた。

「ゆぅ…」


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