オルターナティヴ

05



「君は単なる代わりだったんだが、それ以上になれそうだ」
「…っ?」

 代わり? それ以上?

――なんのこと……。
「思ったより早く息子が帰って来れそうだ。やはり親子の絆というのは強いものだな」

 にやにやと笑いながら、男は霙の緩いタイを解いていく。今度こそ殺されるのだと、霙は青褪めた。もはや呻くことも出来ない。
 涙が浮き、見開いた目で見上げる霙に、男は笑う。歪んだ笑みだ。

「そうそう、そうやって大人しくしていれば、優しくしてやれる」

 するりとタイをほどくと、男はおもむろにブレザーを開き、中のベストをたくしあげて、シャツのボタンまで外しに掛かる。

「んんぅ?!」

 ぎょ、と躯を強張らせた霙に構わず、男はどんどん霙の肌を露出させていく。寒い。鳥肌が立つ。

 シャツを完全に開いただけでは飽き足らず、男はパンツのバックルにまで手を掛けた。さすがに気持ち悪くて霙は抵抗しようとしたが、それすらも慣れた手付きでいなされ、あっさりと膝までずり下ろされて、下着姿にされてしまう。

 寒い。恐い。気持ち悪い。恥ずかしい。痛い。寒い。恐い。恐い。

 霙は状況についていけず、首を振って拒絶の意を表すことしか出来ない。

 もしかして残虐だったり猟奇的だったりするような殺し方をするのだろうか。そうでないと脱がせる意味が判らない。優しくするとは言ったが、その基準が男は通常とは一線を画しているのかもしれない。そうに違いない。だってやっぱりそうでないと、脱がせる意味が判らない。

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