オルターナティヴ

02


 授業を終えて、ふたりと別れる。冬のコンクールに向けて話があるとかで、名前だけ入部している美術部に顔を出して、話を聞いたら遅くなった。

 もちろん、部活動を続行している部員達に比べれば早いのだが、部活に精を出している者と帰宅部の者とでは帰る時間が異なる。丁度その狭間の時間帯になってしまって、正門をくぐるのは霙ひとりだった。

「すみません」

 正門を出た途端に、声を掛けられた。周りには誰もいないから自分のことだろうと振り向くと、なんだか不健康そうな、痩せた男性が立っていた。スーツを着ているものの、どこか着慣れていない感じがする。

「…はい?」

 霙を見て、男性は少し眉を上げた。ひと違いだったのかと霙が眉を寄せると、相手は困ったように笑った。

「この、病院に行きたいんですが…」

 そう言って小さなメモを取り出す。

 なんだ病気だったのか。だったら判る。
 勝手に納得して、霙はそのメモを覗き込んだ。不親切に、住所と名前だけ書いてある。辛うじて霙は知っている病院だったが、口頭で説明するには面倒臭い。全く、行けと言うのなら教えた人間が簡易地図くらい描いてやるのが筋だろう。

「えっと…。んじゃ、ついてきて下さい。案内しますよ」
「いいのかい?」
「口では説明しにくいんです」

 妙に細い路地が入り組んだ場所にある、小さな診療所だ。ただ、親身になってくれると地元では有名でもある。

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