オルターナティヴ

01


※橘×霙 (拘束)

 大学への進学率が高いからという理由で選択の自由もなく親や教師に奨められた学校は、入るために払った努力が勿体無いと思えるほど退屈だった。

 学力のレベルへの『ご褒美』として服装や態度についてはいくらか寛容な節があるが、そこにいる生徒達は、霙にとってどれも似たようなものだったのだ。
 大学へ進学するために必死に勉強している奴。そこそこのところに行くからと遊びほうけている奴。

 最初は、遊糸も後者なのだと思っていた。金茶に髪を染めて、ピアスを開けて、制服も着崩して、授業も頻回に寝たりして。『遊糸』という変わった名前の字面だけが印象に残っていた。

 だが、違うのだと知ったのは、教師との二者面談のときだった。

 どこへ行きたい。そう訊いてきた教師に、当時学校の雰囲気にうんざりしていた霙は、そんな気もないのに「どこにも行きたくない」と嘯いた。
 すると教師はこれ見よがしに額を押さえて、「橘だけじゃなく、お前もか」と言ったのだ。
 少しして、橘 遊糸は、本当に大学へ進学する気はないのだと知った。

 保健室で初めて会話らしい会話をした翌日から、なんとなくメールアドレスを交換したりして、親しくなった。

 この学校にいる2種類の人間とは違うというだけで、霙の興味をひいた。遊糸を通じて、海とも仲良くなった。

 まだきちんと出会ってからは3日しか経っていないが、2年目の秋にしてようやく、霙は学校が楽しいと思っている。

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