憂鬱サニーデー 03 8時を過ぎれば確実に六花は居なくなる。そうしたら部屋を移動して、家を出る。窓が開いていなかった場合はガラスを割るしかないが、音でバレたとしても六花の部屋に鍵はないだろう。どうにか掻い潜って逃げる。 監禁された高校生のことなど気にする様子もない青く晴れた空を、憎々しい気持ちで眺めた。 何度も何度も海や晶に助けを求めようかとケータイを握り締めた。でも、こんなこと、相談出来ない。 父親に『悪戯』――性的虐待を受けていたなんて。 そして今なお、受けそうになっているなんて。 世間も視野もまだまだ狭い遊糸に、そういう場合の対処法――警察や児童相談所に頼ること――など、浮ばない。加えて思春期であり、元来、目上の存在に『頼る』ことが嫌いで苦手な性格の所為もある。 ベッドの上でごろごろと時間を無為に過ごしているうちに、とろりとした眠気が襲って来た。 ずっといじっていたケータイが、握り締めた手の中で温かい。 ――まだ、8時まで、あるし…。 そんな言い訳を自分自身にしながら、遊糸の意識は眠りに沈んだ。 ぞくん。 「ッ?!」 [*前] | [次#] 『カゲロウ』目次へ / 品書へ |