憂鬱サニーデー

02



 ガチャン。

 ほんの僅か軋むだけの扉。何度やっても動かない。力を込めても変わらない。
 静かに、血の気が引いていった。
 これは。

――監禁、された…。

 橘もさすがに遊糸の様子が違うことに気付いたのだろう。つまり、幼い頃受けた『悪戯』の記憶が戻ったことに。

 そうでなくても新たに『悪戯』を受けた息子が、大人しく日常生活を続けられると思える方がおかしい。そして逃避行動を予測し、監禁するという手段に出たということは。


 『悪戯』を、これで終らせる気はないということだ。


「っ!」
 冗談じゃない!

 ノブを回したまま、ドアに体当たりする。ドアは軋むきりで、開く気配もない。
 体当たりしてから少しの間、ドアの外で鳴り続ける、じゃらじゃらと言う音。もし南京錠のようなものを取り付けたのだとしたら、一体いくつの鍵がついているのか。

「っとに、冗談じゃ、ねぇぞッ…!」

 身を翻し、ベランダを見る。
 部屋の高さはマンション8階。降りることは不可能だ。だが隣は、六花の部屋になる。

 時計を見る。まだ6時になったばかりだ。

 からら、とベランダへの全面窓を開けて外に出て、50cmほどの空間を隔ててある六花のベランダを見る。大丈夫、行ける。確認して、遊糸はもう一度自室に戻った。

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