憂鬱サニーデー

01


※橘×遊糸 (拘束/玩具/挿入なし)

 目を開く。
 自分のベッド。服もきちんと着ている。そのことに、一瞬なにが起こったのか判らなくなる。
 ゆっくりと起き上がって、遊糸は膝を抱えた。

――夢?

 特に身体に異変はない。キスされて、『悪戯』された、という記憶が曖昧にある限りで、その感触は思い出せない。

 だが。
 戻ってしまった幼い頃の記憶。

 最初の、『悪戯』。

 あれは恐らく、間違いない。あれが直接でないにしろ原因のひとつとなって、きっと母は橘と離れるに至ったのだ。いや、母はそれを知らないのかもしれない。知らなければいいのにと、遊糸は思う。

 のろのろと立ち上がり、服を脱ぐ。皮膚にも異変はないようだ。夢であって欲しい。けれど、それが儚い希望であることも、同時に判る気がした。
 制服に着替え、息を吐く。
 私服をいくらか鞄に詰めて、財布とケータイを確認する。

 ここには、居られない。

 バイトを増やして、ほんの少しだけ海のところにお世話になって、そうして逃げる。
 橘がもし学費を払うことをやめるなら、そこで学校をやめて働くことになっても構わない。
 すっかり狂ってしまった人生設計を立て直して、遊糸はドアノブを掴んだ。

「――?」

 一瞬感じた、違和感。
 それは、ノブを回し、外開きのドアに力を込めた瞬間に、確信に変わった。

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