転がる珠 07 不器用な接し方。だが、接そうという意志、もしくは対応しようという意識はあるらしい。 ならば、最初は不器用で多少間違っていても、なるようになるだろう。遊糸に『父親』はいなくとも、皮肉なことに父親には『息子』はいるのだ。相手が察してくれるに違いない。 「お前んちは特殊なんだからさ。お前から話しかけなくてもいいだろうけど、話し掛けてきたら、相手してやれよ」 「海んちは、どんな感じ?」 きょとん、と首を傾げる遊糸に、なんだか弟に接するような気持ちになる。頭を撫でて色々教えてやりたい。 もちろんそんなことはしないが。 「俺んちは俺んち。遊糸んちは遊糸んち」 「んだよ、母親みたいなこと言いやがって」 遊糸は苦笑して、けれど納得して、話題を打ち切った。 昨日のバイトを代わってもらった代わりに、今度バイト先の先輩に何かおごらなくてはならなくなったと、嬉しそうに話す遊糸を――遊糸はその先輩と遊ぶのが大好きなのだ――、やはり海は兄のような気持ちで見る。 (可愛いなぁこいつ) 顔はかなり整っている方だとは思うが、そういう意味ではなく。 (うまくいくといいよな) やっぱり友達には、幸せになって欲しい。 [*前] | [次#] 『カゲロウ』目次へ / 品書へ |