不可視の声

01


※橘×六花(Notノンケ受)

 朝。
 橘の部屋へ行き、ベッドの上で両手を広げて招き入れるイカレた父の上に跨る。

「おはよう、遊糸」
「お、はよう…父さん」

 衣服を纏うことを許されない白い肌を、骨張った両手が撫で回す。暖房の入った部屋は暖かいが、背筋や腰周りをかすめるようにされる度、ぞわっと鳥肌が立った。

 今でもまだ、信じられない。

 この男が実の父親で、この男に女のように抱かれて、記憶が溶けるほどに乱れたなんて。
 まだこの壊れた生活が始まって、2日目であるなんて。

「…ッ」

 散々の逡巡を挟んで、遊糸は橘のかさついた唇に自らのそれを押し付けた。
 舌をほんの僅か差し出して、相手の唇の割れ目を舐める。開けて、と。受け入れて、と。そう言っているような気がして、かぁ、と頬が熱くなる。

 ちろ、ちろ、

 何度かそうしていると、橘が笑う気配がして、唇が開いたと思った瞬間には、ぢゅっ、と音を立てて相手の口内へ遊糸の舌が吸い込まれた。

「ぁ、む…っ」
 ずずっ、ヂュッヂュッヂュッ、
「ぁ、ぁぅ…っ」

 絡んだ唾液ごと全て吸い尽くすかのような勢いで、橘は遊糸の舌を味わい尽くす。
 それだけではなく、橘の右手は遊糸の乳首を指先で転がし、左手は緊張して力が篭っている尻を撫でている。もどかしい感覚につい、遊糸の腰が揺れる。

「ぁふ…んッ…、ッん、っん」
 ぢゅるっ、ヂュッヂュッヂュッヂュッ…

 ぷは、と解放されると、酸欠か、もしくは他の理由か、くたりと遊糸は力が抜けてしまった身体を橘に預ける形になった。乳首を指先で引っ掻かれる度に肩が跳ねる。

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