「で、私は打ち止めの寝室にお邪魔するという方向でいいんだよね?」
「オマエと打ち止めを二人きりにすンのはすごく不安だがな」
「アクセラったら、羨ましさ故の嫌がらせですか?ってか一方通行と打ち止めが二人きりの方が危ないと思う」
「だったら打ち止めを解放しやがれ。説得力が欠けてンだよオマエはよォ」
ちぇ、と舌打ちをして名無しさんはがっちり腕でホールドしていた打ち止めを離した。
「ぷっはぁ!名無しさんって力強いんだねってミサカはミサカは窒息死するとこだったって言葉の裏ににおわせてみたり」
「におわせるどころかはっきり言っちゃってるよ打ち止め!傷付かないけどね!」
キャッキャキャッキャと打ち止めと二人でじゃれあっていた名無しさんが何か邪悪な視線を感じ恐る恐るソファの方を振り返ると、予想通り楽しいこと思いつきましたという顔をした一方通行と目が合ってしまった。
「オイ」
「な…何でしょう?」
「オマエ、ここにタダで住む気じゃねェだろォなァ?」
「……へ?」
な…何を企んでいるんだ一方通行!と怯えて若干笑顔のままで固まっている名無しさんを見て、一方通行は更にニヤニヤと笑い出した。
「っつゥ訳でェ、オマエは今日から働け。馬車馬のよォにな」
「言ってることは正しいとは思うが言い方が最悪だなお前!」
「口答えする度にオシオキ、な」
ケタケタと一方通行は笑う。
「この野郎!調子のりやがって、返り討ちにしてくれるぜ!」
「……オマエ夕飯抜きな」
「ぎょえ!?口答えしただけで生命を脅かされる事態になるの私!」
「でもでもってミサカはミサカは口をはさんでみる。ごはんは風向子に作ってほしいってミサカはミサカは可愛くお願いしてみたり!」
「え?いいの?私が作っても…」
「うんってミサカはミサカは元気良く返事をしてみる!だってあの人の作るごはんは美味しくないし、もうファミレスのごはんには飽きたんだよってミサカはミサカは現状を説明してみたり」
「そうなんだ……打ち止め、小声で言わなきゃ一方さん傷付いて泣いちゃうよ」
「……泣いてはねェ」
「……傷付いてはいる、と」
名無しさんがからかうと、一方通行はうぜェと呟いて打ち止めと名無しさんに背を向けてしまった。意外にだいぶ傷付いているらしい。
「だから、名無しさんがごはんを作ってくれたら、作ってくれた人のごはんを抜くなんてことは出来ないよねってミサカはミサカは至極当然の理由を述べて名無しさんを救ってみたり」
「その通りだよ打ち止め!本当に優しい良い子だねぇ。親父殿とは大違いだわー」
「誰がオヤジだッ!!」
「わーいわーい名無しさんの手料理ってミサカはミサカは大喜び!」
一息ついて名無しさんは時計を見た。時刻は既に18時を過ぎていた。
「じゃあそうだなぁ、すぐ出来るしチャーハンでも作ろうか」
「言っとくが食材なンざ少しもねェぞ」
「私を誰だと思ってるの?」
そう言って名無しさんは左手をキッチンに置いてあるテーブルの上にかざした。直後、空間が歪んでドサドサと食材が現れてはテーブルの上に落ちていく。
「炊飯器が無いとさすがに困ったけど、あるから良かったー」
「オイ、なンか犯罪くせェなオマエの能力」