とあるアパートの一室。深呼吸をひとつしてから名無しさんは扉を開けた。
「お邪魔しまーすっ」
「あァ、本当邪魔だな。邪魔以外の何者でもねェ」
「うるせーよ年中モヤシ野郎」
「……!?テメェ、ブッ殺す!!」
「ちょっと、打ち止めの前でなんて物騒なことを言うんだ君は!」
「マジうぜェよオマエ」
ジロリと睨んでくる一方通行を無視してドカドカと名無しさんは部屋に上がり込んだ。さすが一方通行というか、無駄なものは何一つ無いこざっぱりした部屋だった。
「リビングにーキッチンにー寝室が2つかぁ。いいトコだねぇ。ん?私はどこで寝ればいいのかな」
「玄関の前もしくは玄関の外で決まりだなァ」
「どっちも屋外じゃねぇかこの野郎!」
「二人の邪魔しちゃ悪いからってミサカはミサカは空気を読んでみる」
「え!二人で夜が明けるまで殴り合い続けろっていうの打ち止め!」
「……なんでそう返されたのかなってミサカはミサカは首をかしげつつ二人は恋人同士なんだよねって確認をとってみる」
「「…………」」
名無しさんと一方通行は黙ったまま顔を見合わせた。
「………そうなの?」
「知らねェよ俺に聞くな」
「え?ってミサカはミサカは二人の関係がますます分からなくなったり…。だってさっきキスとかなんとか言ってたし名無しさんは一方通行を追いかけて来たんだよね?ってミサカはミサカは質問してみたり」
「うん…私は一方通行が好きだよ?けどさ、一方通行は私の事はそういう好きの相手だとは思ってないんだよ。だから恋人同士ってのは違うかな。名無しさんさんは切ない片想いなんだね」
「えぇっじゃあ何で肉体関係を持ったことがあるのってミサカはミサカは単刀直入に聞いてみたり」
「うぐっ!?難しい言葉を知ってるね打ち止め!そしてその質問に簡潔に答えるなら若気の至り。中1にしてはマセた一方さんが暴走したのだよ。私は被害者」
「若さ故の過ち…ミサカにはまだ分からないけど、いつか分かる日が来るのかなってミサカはミサカは不安に顔をしかめてみたり」
そうやって打ち止めと勝手に言いたい放題喋っていると、ソファに横になっていた一方通行が口をはさんできた。
「ナニが被害者だァ?事後承諾でもなンでもねェ。強姦でもねェ。アレはれっきとした合法セックスだっただろォが。オマエだっていいっつったじゃねェかよ」
「お前はもう喋るなよこの歩くセクハラ野郎」
「過ちでもなンでもねェだろっつってンだ。オマエも俺も覚えてっし別に忘れてェとも思ってねェンだろ?実際オマエは俺を追いかけて来たらしいしよォ」
その言葉に名無しさんの目が驚きによって丸くなる。
「え、そうだったの?てっきり私は欲求不満の解消に使われたのかと思ってたよ。だって君はその後にあの研究所を出ていっちゃったんだから」
「馬鹿野郎、ンなカスみてェな事誰がするか」
「……そうなんだ。ちょっと嬉しい」
「ちょっとかよ、もっと喜べ自称レベル2」
「結局二人はラブラブなんだね、ってミサカはミサカは安堵の表情を浮かべてみたり」
「「いや違う」」
とにもかくにも、ちぐはぐな三人の同居が始まったのだった。