「頑張って作ったんだからねってミサカはミサカは胸をはってみたり!!」
「ハイハイ、分かったからガキはさっさと寝ろ」
今日は2月14日。チョコレート会社の陰謀だろうと何だろうと、乙女にとっては大切な一日である。朝から打ち止めのチョコレート作りを手伝うはずが、前日の夜まで何を作るか考えていたのがまずかったのか二人揃って寝坊し、夜になってやっと完成したのだった。
「手伝ってくれてありがとうってミサカはミサカはあなたにお礼を言ってみる」
「いえいえ!2月14日に間に合ってよかった」
「あと3時間ぐらいで2月15日だがなァ」
「うるさいなあもう」
「ミサカは寝るね、ってミサカはミサカは欠伸を噛み殺しつつ自分の部屋に向かってみたり…」
「おやすみー」
自分の部屋に戻っていく打ち止めの背中を見つめたまま、私は振り返れずにいた。後ろから不穏な空気が漂ってきているからだ。
「わわ私も疲れたしもう寝ようかねー?」平然を装ったつもりだったが、予想以上に声は裏返る。そう言い訳して居間から出ようとしたが動けない。理由はたったひとつ。いえたった一言。
「なァ」
「…………なんでございましょう?」
「オマエはなンにもくれねェの?」
いかにも虐める理由思い付きましたというような声を彼は私にかけてきた。こいつ…くれないんだ残念…欲しかったのになぁという気持ちが微塵も感じられない…!
「オィ」
「ひゃい!」
「こっち向けよ」
「いやだあぁ」
「イイから、こっち来いよ」
「いやですうぅ」
「………じゃァオレがそこまで行ってさしあげましょォかァ?」
「何でしょう一方通行様」
「このチョコってのは打ち止めからオレにだよなァ?オマエからオレにはなンもねェの?オマエって…確か居候って立場だよなァ」
「お、おぅ…よ」「家主サマへの感謝のキモチとかはねェのか?」
「溢れるほどございますよほら」
とりあえず板チョコを手から出して渡してみた。
「ほォ、そォいう態度をとるワケかァ…」
「えっ」
「打ち止めは手作りで…オマエは板チョコねェ」
「だだだだって今日は打ち止め手伝って自分の作る暇ないしってかその事情全部知ってるじゃん!私を虐めたいだけなのは分かってるわよ!?」
「わかってンじゃン」
「は!?」
「だから今から、たっぷり虐めてヤるよ」「無理、無理!ぎゃあちょっとやめて触らないでいやああ」
「うるせェよ、ガキが起きンだろ」
「み、耳はやめ…ひゃわっ」
「ナニを今更恥ずかしがってンだァ、処女じゃねェンだしキスくらい平気だろ」
「確かに処女じゃないけど!あの時以来そういうことしてないし!アクセラはどうか知らないけどさ!」
「ナニ拗ねてンだよ」
「拗ねてな…!「ハイハイ、だから黙ってろって」「ん…」
「何だか騙された気がする」
「…はァ?」
「嘘だ、絶対他の女と寝てる!!!」
「………オマエは……どこのヒステリーな女だよ」
「う…だ、だって…じゃあ!じゃあどうやってキスのテクニックを学んだのさ」
「あァ?なンですかァ?そンなに良かったのかよ」
「に、ニヤニヤしないでっ」
「そンなに喜ンでいただけたのなら光栄だなァ、ついでにもっかいシてやろォか」
「い…!いらないです!」
「まァまァ、遠慮してンじゃねェよ」
「や、やめ」
「今日はバレンタインなンだろォ?チョコ貰う代わりってコトで」
「面白がってからかうなーーーー!いやー!」