レベル5とレベル5が出会ってから、4年近くが経とうとしていた。似た境遇からか、はたまた同室で寝食を共にしてきたからなのか、二人はあっという間に打ち解けていった。
檻から出られない怪物にとって、お互いが唯一年相応の子供になれる相手だったのだ。
「ちょっと…あの…あ…えっと、その」
「あ?何モジモジしてンだよ気持ちわりィな」
「や…その…」
名無しさんはごくりと唾を飲み込んだ。
「あ、アクセラ…!」
数秒の間。名無しさんが恐る恐る顔を上げるとそこにはまさに“ぽかん”という音が似合いそうな顔をした一方通行がいた。
「な……ンだって…?」
「だ・だからぁ!アクセラレータって呼びにくいの長いの嫌なの噛むのだからそのあの…アクセラって呼んでもいい…?」
「う…うるせェな好きに呼べばいいだろォが」「好きに…?も…もやしとかセロリでも「アクセラでいい」
「アクセラ!」
「なンだよ」
「アクセラ!」
「だからなンだよ」
「アクセラって呼ぶとちょっと顔赤くな「名無しさん」
「うぇっ」
「なんつー可愛くねェ声出してンだオマエは」
「もっかい!」
「………へっ」
「もっかい呼んで」
「な…なンでだよ」
「アクセラ」
「……名無しさん」
そんな馬鹿なことをやっていた時だった。遠くから足音が響く。「げ、これから実験だよー」
めんどくさーいと名無しさんは明るくそう言って立ち上がった。その手を急に引かれて彼女はしゃがみそうになる。
「わ、アクセ…」
「…無理すンなよ」
ぼそりと耳元で囁かれて少し朱に染まったその頬に一方通行は軽く触れるだけのキスをした。名無しさんが体勢を立て直して立ち上がったちょうどそのとき、扉が外から開けられた。
「次の実験について説明する。第三実験室にこい。それから一方通行、お前は第一実験室で実験を行う」
「ありゃ、実験するのはアクセラだったか」
「無駄口をたたくな、早くしろ」
そう言われて彼と彼女は檻を出る。先程までの穏やかな表情を消し去り、怪物の仮面を被る。
一人は圧倒的な強さを刻み付けるために。
一人は圧倒的な弱さを認識させるために。
彼らが引き裂かれたのは、この一週間後のことだった。