4号室の、小さな小さな窓から光がほんの少し差し込んで、名無しさんは目を覚ました。
「ふ…ぁ…」
欠伸をひとつして、二度寝しようと名無しさんが寝返りをうち壁を向いていた体を反対へ向けたときだった。
「!!」
目の前に、毛布にぐるぐる巻きになっている物体があった。
「なにこれ!って一方通行じゃん!」
完全に蓑虫と化している彼は、朝が苦手なのかぴくりとも動かない。ふと、昨日された意地悪(などという可愛い言葉で表現して良いのかわからないが、)の仕返しをしてやろうと名無しさんはにやりと笑った。
「一方通行〜」
当然返事はない。名無しさんは毛布の塊の上に馬乗りになると、白い髪の毛が覗いているあたりの毛布を一気に彼から引き離した。日光は容赦なく彼の顔を照らし、反射を行っていなかったのかまともに顔に光を受けた彼は不機嫌そうな声を出しうっすらと両目を開けた。
「おっはよー朝だよ一方通行!」
「………コロス」
「うわっ 開口一番それ!?さすがに酷いよ」
「…じゃア気持ち良く眠ってる人間の上に馬乗りになって無理矢理起こすってのは酷くねェってかァ?」
「いやぁ、昨日のお返しでもしようかな〜って」
「ふゥン……おィ、」
「へ?」
突然襟首を掴まれ名無しさんは前屈みになった。
「……俺に簡単に勝てると思うなよ?」
目の前で彼がそう言った直後だった。
「!?…〜〜っ」
急なことに名無しさんは目を回す。顔を真っ赤にした名無しさんを見て、満足げに彼は笑った。
「悪りィ悪りィ、もしかして…ファーストキスだったかァ?」