第二話:…そんなことを言うんだろうね、超能力者は







朝食という名の昼食を済ませ、名無しさんはアパートを出た。打ち止めは着いて行くと行ったが何があるのか分からないし、もしかすると追われているかもしれない自分の側にいるよりも、一方通行の側にいた方が安全だと思い、アパートに二人残してきた。一方通行は一度ボソリと「気を付けろよ」と言ったが、名無しさんが打ち止めのことを考えているのを汲み取ったのか、アパートに打ち止めと残ると言ってくれた。


(というかコンビニに行くだけなんだからそんなに心配しなくてもいいとは思うんだけどね…)


そんなことをぼやきつつ、名無しさんはコンビニへ向かう。






「最近出たヤツ…、コレか」


昔たった一度だけ、二人で研究所をぬけだし外へ出たことがある。何も考えず飛び出したので、行く当てもなく結局近くにあったコンビニへ寄ってすぐに戻ったのだが。


(アイツ、変な買い方するんだよね)


名無しさんは一度だけ見たことのある一方通行の缶コーヒーの買い方を真似て、ガラガラと同じ缶コーヒーをカゴヘ大量に入れた。それから新商品のアイスを打ち止めの為に買う。レジを済ませコンビニの外へ出ると、周りの空気がコンビニに入った時と変わっていた。


(科学者が…犬でも飼ったのかしらねー)


そりゃあ路地裏に一歩入ればスキルアウトの集団がゴロゴロしているだろうし、金を積めば仕事をこなすだろう。だが、いつも偉そうにしている科学者たちがそんな奴らに頭を下げてまで自分を捕らえようとするだろうか。名無しさんは頭を捻りつつ、とりあえずアパートがある方へ歩を進めた。



…彼女が研究所へ入れられたのには訳がある。初めて能力が表れたとき、彼女は確かにレベル5程の能力を使ったからだ。しかし、彼女はその時に大切なものを失った。更に、入れられた研究所での実験は最悪なものだった。そういう訳で彼女はその時から研究対象から外れようとずっとレベル2程度の力しか使っていない。だがレベル5程度の力を一度使ったことがあるだけに、いくらレベル2を偽っても可能性を捨てきれない科学者たちによって研究所から出られなくなっていたのだった。



とりあえず無視してアパートへ向かって名無しさんは歩いていた。しかし、簡単には帰ることが出来なかった。なぜなら、彼女が腕に抱えていた缶コーヒーのうちの一本がパンと破裂したからだ。


「あーぁ、誰が怒られると思ってるのかな」

名無しさんは静かにコンビニのビニール袋を道路脇に置くと背伸びを一度して、路地裏へと入っていった。


「名無しさんさんに喧嘩売るってのがどんなことか、その身体に刻みつけてやンよ!…そんなことを言うんだろうね、超能力者は」







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