「おはよう、ってミサカはミサカは朝からラブラブな二人に朝の挨拶をしてみる。もう9時だよってミサカはミサカは朝食を希望!」
「……ふぁ…?」
朝から元気な打ち止めの声を聞いて、名無しさんは目を覚ました。と同時に自分ががっちりと抱き締められていることに気が付いた。
「……、ほ、ほああぁぁあ!!」
もちろん抱き締めている主は一方通行だ。昨日あのまま思い出話なんかしているうちに眠たくなってきたなーと思ったことを名無しさんは何となく覚えていたがその先が少しも思い出せなかった。
「起きて一方通行!私は打ち止めの視線に耐えられない!あぁコイツ寝起き悪いんだった…っちょ、お前マジ起き、起きてえぇぇ」
一方通行を起こして早く打ち止めの「やれやれ」という視線から逃れたいのに、なかなか一方通行は目をさまさなかった。こういうことはいつもしてくれないし、2年ぶりの彼の懐かしい体温がすごく嬉しい名無しさんだったが、今はとりあえず離れたい。そんな名無しさんの頑張りが通じたのか、ぼんやりと一方通行は目を覚ました。
「…ン?あァ、あンまま眠っちまったのか。……オマエ…あンま成長してねェなコレ」
「き……きゃわっ!おおおお前何しやがる触るなセクハラ野郎!ちょ、マジやめ…打ち止めがぁぁっ!ホラすごい顔で見てるからぁー――!!!」
「疲れた……」
一人キッチンで朝食(しかし最早昼食)を名無しさんは作っていた。作るとは言ってもゆで卵に食パンを焼いただけなのだが。左手で適当に出現させた野菜を食べやすい大きさにちぎってボウルに入れる。どこのドレッシングを出そうか名無しさんは悩んだが、冷蔵庫を開けるとまだ期限の切れていないドレッシングを発見したのでそれを使うことにした。居間ではまだソファの上で「ァー眠ィ…」と欠伸をしている一方通行と、朝のニュースに夢中になってテレビを食い入るように見つめている打ち止めがいる。居間とキッチンを行ったり来たりして、名無しさんは朝食(昼食)をコタツの上に並べた。
「手を合わせてーっ」
「合わせました!」
「今日も頑張りましょー!」
「あれ!?いただきますじゃないの?」
「………」
焼きたての食パンにバターとイチゴジャムを塗る。この組み合わせを考えた人はきっと天才だな、と名無しさんは食パンにかぶり付きながら思った。
「コーヒー」
「…がどうしたの」
「コーヒー飲みてェ」
「へーい」
キッチンに戻り冷蔵庫を開けると、缶コーヒーは1つもなかった。
「なかったけど…」
「あぁ!忘れてたねってミサカはミサカは思い出してみたり。昨日は缶コーヒーを買いに行くとこだったんだよってミサカはミサカは説明してみる」
「コンビニ行く途中で打ち止め誘拐されたんかい!」
言いつつ、名無しさんは左手をコタツの上にかざした。
「どこのメーカー?」
「わかンねェよ…なンか最近出たヤツ」
「え?最近?…じゃあ無理だー」
「っつゥかオマエに会ったせいで忘れたンだから責任持ってオマエが買ってこい」
「えー、やだぁ」
「やだじゃねェぶンな」
「ぶってねー!ったくしょうがないなー…ごはん食べたら買いに行くから、今は我慢して」
「ソレで良い下僕」
「誰が下僕かっ!」
「名無しさんをいじめちゃダメだよってミサカはミサカは一方通行を叱ってみる」
「そうだそうだ」
「二人はラブラブなんだから、ケンカしないのってミサカはミサカは二人に注意してみたり!」
「ラブラブだったの!?」
「だから俺に聞くなっつゥの」