第一話:ヨロシクなァ、





母さんが、大好きだった。
私の頭を撫でてくれる、あの手の平が大好きだった。





私はそのとき、小学生だった。両親はどちらも学園都市の科学者で、毎日家に帰ると私は実験をさせられていた。今思えば自分の子供を実験体にするなんて酷い話だけれど、その頃の私はそんなことを思いもしなかった。毎日力が強くなる度に、母さんは私を褒めてくれた。それだけで幸せだった。


なのに、あの日。

母さんと父さんの実験は成功した。


成功、してしまった。





レベル5生産計画。

薬と実験を重ねることによって短期間でレベル5へと進化させる計画。

それが母さんと父さんが、人生を捧げたもの。


母さんと父さんの、命を奪ったもの。





「今日から君はここで暮らすんだ。両親が亡くなって辛いとは思うが、君には素晴らしい力があるんだから、我々に協力したまえ」

――嫌だ

「どうした?…おかしいな」

――嫌だ、力は使いたくない

「特定の状況下で無ければならないのか?」

「そうかもしれない」

「ならば長期に渡って調べる必要があるな」

「4号室へ入れておけ」




――嫌だ、嫌だ、こんな力はもう…

数年間をそうして過ごした。研究所の他のモルモット達は私には近付かなかったし、いつも一人だった。だけどあの日、私の世界は色を変えた。


『ンだァオマエ、そのシケた面はよォ』


彼が、


『テメェと俺が同じレベル5だァ?…っは!びびって力を使わねェ野郎なンかと同室だァ?めンどくせェ』


彼が、


『…まァでも、ヨロシクなァ、名無しさんサンよォ』


私の前に、現れた。






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