竹谷家の夜は一家の大黒柱である竹谷八左ヱ門の叫び声で始まるといっても過言ではない。そう、今日だって…
「うわああああああああああっ!!?」
俺がいつものように娘の三那と風呂に入ってるとガラッと音がして振り返ると、何故かもう一人の娘・真子が入って来た(勿論、堂々と裸で)。結果、この叫びである。
「近所迷惑だよ、お父さん」
「パパうるさーい!」
これまたいつものように娘達から注意の言葉を言われ、ゴメンと謝る。因みに真子はもう中学生なのである。普通は”お父さんとお風呂”は卒業してるもんではないのか?
「お姉ちゃん髪の毛洗ってー。パパ下手くそなんだもん!」
「ぇ…」
「はいはい、わかったからそんな事言わないの。お父さんが可哀相だから」
今のはショックだった!無邪気な笑顔で言われたから余計に傷付くわ。俺は下手くそなのか。だから三那には嫌がられるんだな…。真子もそんな憐れんだ目で俺を見ないでくれ!
「真子、お願いだ…。前隠してくれ」
「別に見られても構わないんだけど」
「…」
お前は良くても、俺は気になるんだよ…!お前、発育いいんだからな?充分体つきは女なんだからな?まさか学校でも、そんな無防備なのか!?
一人悶々と考えていると二人が覗き込んで来た。
「お父さん疲れてる?」
「三那が背中洗ってあげるー」
心配げな顔した二人はやはり自慢の娘で。良い娘を持った、と満足する。
二人の頭を一撫でして笑う。
「じゃ、お言葉に甘えて洗ってもらおう!」
「「了解!」」
今日も俺の家は平和です。
「もう少し強くしてくれー」
「えいっ!」
「痛い痛いっ!三那やり過ぎだ!」
「疲れたー。お姉ちゃんバトンタッチ!」
「はいはい」
「ちょっ真子!痛いからそれ止めて!」
後日談