―――お前は、美しい、女性の様だね


ひどく耳の奥深くで響いている。こびりついて離れないくらい何度も何度も言われ続けた言葉。絹の様になめらかで透き通る様な白い肌に、艶やかでサラサラな黒い髪。顔のパーツ、体のパーツ一つ一つがバランスよくついている。誰もが羨む様な外見。それが立花仙蔵の姿だった。

さて、「女性の様だ」と言われる為、この人間は男なのだ。どんなに美しい外見をしていようと、誰よりも華奢な骨格をしていようと、女性にはなれない。

彼も自分の外見を理解していた。忍者として利用出来る物は利用する。だが彼は自分自身の姿が好きでは無かった。男らしい端正な顔つきが欲しかった。筋肉質な体が欲しかった。本物の"男"が欲しかった。ただのコンプレックスの塊である自分の身体には嫌悪感が付き纏う。



「貴女は美しいね」

「あら…うふふ、嬉しいわ。ありがとうございます」

「、絶世の美女だ」

「……ご冗談を。誉め過ぎです」



女物の着物の胸元をはだけさせ、艶やかな髪を項に垂らし、紅くなまめかしい唇を舌で舐めて、男を誘う。

女の様に扱われ、誰か知らない人間の腕の中で鳴く。忍務ではよく有ることで、見た目麗しい彼には毎度のように回ってくる。生きる為に脚を開く。生きる為に女性で居続ける。気がつけば憎悪感が身体を支配していた。

そして、また自分が、心の奥底で死んで逝く。




さよなら、私。







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