雪がひらひらと花弁の様に降る。
もうすぐ冬が終わろうとしている所だが風は未だに冷たい。あても無く、雲で覆われた空の下をただ歩いている。かじかんだ手に息を吐いて温め、昔もよく雪で遊んだ時にやったなぁ…と思い出に浸る。
―――あの頃は楽しかった
今となっては戻る事の出来ないあの時。僕はもう無垢な少年じゃない。汚れ過ぎてしまった。手には赤色がこびり付いて、体には鉄の臭いが染み付いて消えることは無いだろう。
忍になったのだ、僕は。
学園にいた頃の仲間は家を継いだ者や忍以外の仕事をしている者も多い。僕らの進路は違えた。
「寂しいな…」
呟いた一言が雪に融けて消える。覚悟していた筈の消失感は自分の予想を遥かに上回り、虚しくて仕方ない。
辿り着いた先は、あの頃の仲間と別れた場所だった。桜が綺麗に咲き誇っていたあの春は何処にも無く、今は寒々としている。
あれから五年の月日が流れていた。
置いて行かないで、僕はここに居るよ。